数次相続について
法改正により、相続登記が義務化され(2024年4月1日より施行となります)、長年にわたり相続登記がなされていなかった不動産について、ご相談を受けることが多くなってきました。
そのような不動産は、地方に多いと思われますが、東京でも、10年、20年、あるいは半世紀以上も名義変更がなされていなかったようなケースもあります。
そこで、今回は、数次相続についてご説明したいと思います。
1 数次相続とは
ある方が亡くなって、その遺産分割が終了する前に、その相続人の相続も開始した状況で、複数の相続を同時に取り扱うことを「数次相続」といいます。
たとえば、甲が死亡し、甲の子であるX1、X2が共同相続人として遺産分割の協議をしていたところ、X1も死亡して、X1の妻Y1,子であるY2,Y3が相続するような場合です。
2 数次相続における法定相続分の計算
数次相続では、まず、1次相続について法定相続分を計算します。
たとえば、前記1のケースだと、1次相続では、X1、X2の法定相続分はそれぞれ2分の1となります。
次に、1次相続による2次被相続人の法定相続分を基礎として、2次相続の法定相続分を計算します。
たとえば、前記1のケースだと、甲の遺産につき、X1の法定相続分2分の1を前提として、Y1はその2分の1である4分の1、Y2とY3はそれぞれその4分の1である8分の1ずつとなります。
数次相続では、法定相続分は相続開始時の民法によるので、注意が必要です。
たとえば、1980年改正前民法では、相続人が配偶者と子である場合、配偶者の相続分は、3分の1でした。したがって、1980年改正前に相続開始した場合には、その相続割合で計算することとなります。
3 数次相続の問題点
相続人が複数いると、土地などの相続財産は相続人の共有となりますが、遺産分割がなされないまま数次相続が繰り返されると、共有者の数が増えたり、一部の相続人の所在等が不明となったりして、管理や処分ができなくなってしまいます。
このようなことにならないよう、早めに弁護士にご相談されることをお勧めいたします。